飯塚高校サッカー部では、多くのスポンサー様からご支援をいただいており、選手とスポンサー様との交流を深めることを目的に、両者による対談や座談会を順次実施していくこととなりました。
今回はスポンサーの1社である「株式会社マンダム」から執行役員 香川亥一郎さんをお招きしました。
サッカー部を代表して登場したのは、キャプテンの吉田善(3年)、高野真音(2年)、杉山駿起(1年)の3人です。→詳しいプロフィールは前編へ
前編では、「外見の変化が心や行動にどう影響するか」をテーマに、香川さんと選手たちが髪型や服装から生まれる自己表現や前向きな変化について語り合いました。
後編では、自分らしさをどう育てていくか、そして見た目の表現が人との関係や未来の自分にどんな影響を与えるのかについて、さらに深く語り合いました。
今と未来を支える基盤となる「身だしなみ教育」
杉山:先ほど香川さんに「今の高校生が自分のやりたい髪型やスタイルをはっきり持っていて、それを表現できているのがすごいこと」とおっしゃっていただきました。これって「個性の表現」なのかなと思うんです。
これも3人で話していて出てきた質問だったのですが、今後部活ヘアサロンのような活動が一般的になって広まっていくと、自分の個性を上手に表現する人は自然と育っていくと思いますか?
香川さん:杉山さんはどう思いますか?

杉山:逆に、自分の個性に気づきにくくなるかもしれない、って思っています。
香川さん:たとえばファッションを選んだり、髪型を決めたりするときは、何かお手本にしてるものはあるんですか? 有名なインフルエンサーとか先輩や友達、それとも家族の影響……それとも、自分自身で「これが似合うかな」と考えて決めているんですか?
杉山:基本的には自分自身を信じて選んでます。
香川さん:いいですね。どうやって身につけてきたんですか? 何かを見て研究することもあるんでしょうか。
杉山:いろいろな情報を見て、試すことは多いです。ちょっとした冒険感覚で「これはどうかな?」とやってみて、「なんか違うな」とか「これはアリかも」と感じる中で、自分に合うものを見つけていっています。

香川さん:そうやってチャレンジする機会が増えていくと、「自分らしさを表現する力」は確実に育っていくんじゃないかなと思います。その点で、失敗というのはすごく大事な要素です。失敗すると、次こそはうまくやろうって気持ちになりますよね。
試合もそうですけど、「これって自分には合ってないかも」「次はもうちょっとこうしてみようかな」と、自分に合うスタイルを考えるきっかけになる。そういう経験を積んでいくことで、自分を表現する力が自然と磨かれていく。そういう環境や機会があるのは、すごくいいことなんじゃないかなと思います。

高野:僕、この座談会前にマンダムのことを調べていて、部活ヘアサロン以外に身だしなみ教育を学校や企業に対して実施されていますよね。生徒目線で考えると、そういう教えを得られる場って、すごくありがたいなと思ったんです。社会に出たとき、確実に役立つんじゃないかなって。
香川さん:よく調べてくれていますね。マンダムでは、身だしなみを外見の話としてだけではなく、自分と社会とをつなぐ表現としてとらえています。だからこそ、若い世代が自分らしさを発揮する機会を応援する活動を続けてきました。
その一環で、学校や企業に対して、特別セミナーや授業もやってるんです。4年ほど前、東京の正則学園高校という男子校で「身だしなみから考えるジェントルマン」というテーマで授業をさせてもらいました。
正則学園には、髪型や服装だけじゃなくて、マナーや考え方を含めて「ジェントルマンとはどういう人か?」を学ぶプログラムがあるんですよ。マンダムとの特別授業を通じて、先生や生徒と共に考える経験を経て、「整髪料でセットした方が清潔感がある」「印象がいいね」ということから、整髪料の使用禁止という文言が校則から削除されたんです。
吉田:面白そうな授業ですね。対外的にいろいろな取り組みをされているマンダムですが、社内向けに自分らしさを表現できる取り組みは何かされていますか? 会社って僕たちにはまだ遠い世界なんですけど、マンダムだからこそのユニークな挑戦があるのではと思い、お聞きしてみたいです。
香川さん:では、入社式について紹介させてもらいますね。入社式の服装は「ビジネスカジュアル寄り」という規定があったんですけど、2年前からそれを撤廃したんです。新入社員には「一番自分らしい格好で来てください」と伝えるようになりました。
式では新入社員はひとりずつ、音楽に合わせて入場することになっています。ちなみに、その音楽は僕が制作しています(笑)。入場シーンでは、事前に聞いていた「ファッションのポイント」を司会者が読み上げるなど、ファッションショーのような雰囲気で、なかなか面白いイベントだと感じています。
ちなみに入社前の面接でも、マンダムでは応募者の方に「スーツじゃなくて私服で来てください」とお伝えしていて、僕たち面接官も私服で対応しています。
高野:自分は服が好きなので、面接に全員一律のスーツではなく、私服で行けるのはいいなあと感じました! 自分らしさの表現を応援する素敵な方法だと思います。
“BE ANYTHING, BE EVERYTHING.”――挑戦が自分らしさの輪郭をつくる
吉田:ここまでお話をしてきて、香川さんに質問です。「個性を発揮する」とはよく言われることですが、そもそも何を発揮することが個性なんだろう? と考えることがあります。僕自身は、自分らしさを出すことが個性なんじゃないかなと感じていて。
香川さん:吉田さんが今言ってくれたことが、まさに答えだと思いますね。「自分らしさってなんだろう?」とは、誰しもが一度は考えたことがあるでしょうが、何が自分らしいのか、若いうちはなかなか分からないこともある。でも、実はどれも自分らしさなんですよ。
年齢を重ねるとだんだんスタイルが定まってくるけど、若いうちはいろいろなことにチャレンジしたくなるものだと思うんです。「こういう服ばかり着てたけど、実はこっちのテイストも着てみたかった」とか、そういうのも個性のひとつじゃないかと。
試してみた結果、「意外とこっちの方が自分にしっくりくる」と気づくこともあるし、そういう経験を重ねていくことで、自分らしさの輪郭が少しずつ見えてくるんですよね。
だからこそ、自分を試せる場があるって大事なんです。僕たちもコーポレートスローガンとして“BE ANYTHING, BE EVERYTHING.”(なりたい自分に、全部なろう。)と掲げていますが、まさにそういうチャレンジを通じて、自分らしさを発見していってもらえたらいいなと思っています。

吉田:香川さんのお話の中で、「いろいろ試してみることが大事」という言葉がすごく印象に残りました。そうやって試すことで自分の中の変化だけじゃなくて、周りとのコミュニケーションも生まれるんじゃないかなって思ったんです。
僕はフリーファッションウィークのとき、けっこう積極的に私服で参加してたんですけど、そのときにすごく感じたのが、「あ、この子ってこんな服着るんだ」「見た目は静かな子だけど、意外とハードめなスタイルなんだな」、逆に「やっぱりこの子らしいな」と思うような服装だったりして、普段とは違う一面が見えたことなんです。
学校生活では、どうしてもサッカー部の仲間と過ごす時間が長くなるから、それ以外の生徒たちとの関わりは少なくなりがちです。でも、こういう企画を通じて、学年が違う子とか普段接点がない子たちのことを自然と知れるというか、「この子ってこんな一面があるんだな」と興味がわく瞬間があって。
そういう意味でも、見た目の表現を楽しむことが、人との関係性を豊かにするきっかけになるんだなと気づきました。杉山くん、フリーファッションウィークのあと、クラスがめちゃいい感じになったって言ってたやん。その話、ここでしてほしい!
香川さん:マンダムでは「自分らしい」を「自分で決めること」「自由であること」「正解も間違いもないこと」「何度やり直してもいいこと」「他人の『らしい』を認めること」と定義しています。吉田さんの話からは「他人の『らしい』を認めること」を通じて、豊かな時間を過ごしたことが伝わりました。そして、杉山さんの話、気になります!
杉山:まだ1年生で、入学してそんなに時間が経っていなかったこともあって、クラスでもみんながそこまで打ち解けてないというか、ちょっと距離がある感じだったんです。でも、フリーファッションウィークとかメイクアップデイがあって、みんなが笑顔で楽しそうにしてるのを見て、「なんかいい雰囲気になってる」と思ったんです。
「あの子、こんな服着るんだ」「そのメイクすごく似合ってるね」とか、自然に会話が生まれて、男女問わず、距離が縮まった感じがしました。あの日をきっかけにクラスメート同士の仲がぐっとよくなった気がします。
高野:女子がメイクをしてきたり、部活の関係で普段は髪を結んでいる子が髪をおろして登校してきたりして、すごく変化があったんですよね。そういうのを見ると、普段あまり話さない子に対しても「今日は髪おろしてるんだね」と、自然に話しかけることがありました。そういう何気ない一言から、いつもは生まれない会話が広がっていくのっていいなと、僕も思いましたね。
座談会振り返り
杉山:僕、寮で1年生の髪の毛を切ることがあるんです。正直、うまくいくときもあれば、失敗するときもあって。失敗したときは「やっぱりまだ怖いな」と思うし、うまくいって「めっちゃよくなった!」と喜んでもらえたら、すごくうれしいんです。
そうやってヘアカットやセットが好きで、自分だけじゃなくて人の分も日頃からやっているので、今日こうして座談会メンバーに入れていただいて、楽しかったです。貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
高野:もともと髪のセットが好きなので、今日のこの座談会を楽しみにしていました。お話を聞いてみて、普段は知ることのできない活動の裏側や、マンダムが大切にしている個性についてのお話を聞けてとても面白かったですし、共感することがたくさんありました。これから僕自身も、自分らしさを大事にしながら、見た目の表現を楽しんでいけたらと思っています。今日は僕たちとの時間をつくっていただき、ありがとうございました。
吉田:僕自身は、ヘアセットについては普段からやっているわけではなくて、必要なときにちょっと整えるくらいでした。でも、香川さんのお話を聞いて、髪型についての考え方やメッセージに触れて、「いろいろ試してみたい!」と興味が湧いてきました。
杉山からYouTubeを見ながらセットしていると聞いて、自分もそうやって新しい見せ方に挑戦してみようかなって。髪型のことだけ出なく、個性や自分らしさについての話など、すごい深いテーマについても考えることができて、いい時間になりました。
僕のような一般的な高校3年生にとって、香川さんのように大企業の役員を務めているような方と直接お話しする機会はなかなかないので、とても貴重な経験になりました。今日は特別な機会をいただき、本当にありがとうございました。
香川さん:フリーファッションウィークの話は、本当に印象的でした。3人とも、そのときの景色が頭に浮かんでいるのか、話しているときの表情がすごく明るくて。その場にいたほかの生徒さんたちも楽しくていい顔してたんだろうなって、話を聞きながら想像していました。本当に素晴らしい取り組みだったんだなと思えます。
学校としても、大きな手応えがあったんじゃないでしょうか。クラスの雰囲気がよくなったとか、コミュニケーションが活発になったといったエピソードを聞くと、本当にうらやましいなって思いますし、素敵な環境だなと感じました。
それから、マンダムの部活ヘアサロンの取り組みを機にヘアセットに興味を持ってくれたり、杉山くんのように人の髪を切るようになったっていう話まで聞けたのにも感動しました。
この取り組みを通じて、マンダムの活動が若い皆さんの挑戦や学びのきっかけとなっていることを心からうれしく感じます。今後も、自分らしさを応援する企業として、皆さんのそばに寄り添い続けたいと思います。こちらこそ、ありがとうございました。
(前編)特別座談会:「見た目が変わると、心も行動も変わっていく」田善×高野真音×杉山駿起×マンダム 執行役員 香川亥一郎はこちらから
企画・構成/池田園子