飯塚高校サッカー部では、多くのスポンサー様からご支援をいただいており、選手とスポンサー様との交流を深めることを目的に、両者による対談や座談会を順次実施しています。
今回はスポンサーの1社である「博多港運株式会社」から港運部で主任を務める古玉尚大さんをお招きしました。古玉さんは大学卒業後、全く異なる業界からの転職で博多港運に入社し、現在8年目を迎えています。
友人の紹介で港湾業界に興味を持ったことがきっかけだったといいます。現在は現場スタッフへの指示や安全管理を担う立場として、港湾物流の現場を支えています。

サッカー部を代表して登場したのは、キャプテンの吉田善(3年)、高野真音(2年)、冨澤琉胤(2年)の3人です。
本記事は座談会の後編。現場でのコミュニケーションが安全と成果を生み、チームを前向きに動かす――そんな共通言語を、博多港運と飯塚高校サッカー部が見つけていきます。
さらに、高卒採用で早くから現場に飛び込む若手がもたらす相乗効果や、博多港運が80年以上続いてきた背景にも迫ります。
(前編)特別座談会:「日本と世界をつなぐ港湾物流と“いいチーム”の条件」吉田善×高野真音×冨澤琉胤×博多港運 古玉尚大を読む
リーダーは話しやすい人であれ

古玉さん:皆さん、感想をありがとうございます。もうひとつ付け加えると、周りから声をかけてもらうことで自分を振り返り、気づきを得られることもあります。そのためには、普段からどれだけコミュニケーションを取れるかが大事です。
特に管理職のような立場になると、下の人からは言いにくいことも増えてきます。だからこそ、あえて「話しかけやすい人」でいることが大切だと思っています。そうすることで現場の声を吸い上げやすくなりますし、本音も聞きやすくなる。私自身、常にそういう存在でありたいと意識しています。ところで、冨澤さん、高野さんは吉田キャプテンをどう見ていますか?
吉田:不意に来ましたね(笑)。
冨澤:高校に入る前はキャプテンって怖い存在で、言うことには絶対従わないといけない人だと思っていました。でも実際に吉田くんやその前のキャプテンを見ていると、とても優しくて話しかけやすいんです。吉田くんの発言に対しても、みんなで意見を出し合ってよりよい方向に進める。そういう雰囲気をつくってくれる、本当にいいキャプテンだと思います。あ、隣にいるから言ってるわけじゃないです(笑)。
高野:僕は同じ寮で関わることが多いんですけど、吉田くんは話しやすくて優しい一方で、言うべきところはビシッと言ってくれるんです。だからすごく頼りにしていますし、高校生とは思えないくらい達観しているなと感じています。僕もいつもそう思ってますよ(笑)。

吉田:ありがたいけど、ちょっとプレッシャーかかりますね(笑)。ちなみに、僕の前のキャプテンだった松尾くんは、本当に明るくて太陽のような存在でした。誰に対しても同じように優しく接していて、見習うところばかりでした。
もちろん松尾くんと同じようにしようとは思っていませんが、自分らしさを大切にしつつ、松尾くんのいいところは吸収していきたいと考えてきました。だからこそ、今ふたりの意見を聞いて「自分も少しは受け継げているのかな」と思えて、うれしいです。
古玉さん:いいリーダー、話しかけやすいリーダーがいるっていうのは、やっぱり皆さんの環境でもとても大事ですよね。そういう存在がいるからこそ、仲間同士の関係もスムーズになって、チーム全体が前向きに動ける。だから結果的に「今を楽しめる環境」がつくられているのだと思います。
皆さんの話を聞いていて、本当に「今を楽しんでいるんだな」と感じました。その姿はとても素晴らしいですし、これからもぜひ大切にしてほしいです。今の仲間と一緒に戦える時間は一度きり。やがてそれぞれが別々の道に進んでいきます。だからこそ、この瞬間を仲間と楽しみながら全力で過ごしてほしいと思います。
高卒採用と若手がもたらす良影響

冨澤:博多港運さんでは高卒採用も強化していると伺いました。高卒で入社すると、大学卒業よりも4年ほど早く社会に出ることになりますよね。その若さだからこそのよさや高卒だからこそ発揮できる強みってどんなところにあるんでしょうか?
古玉さん:若手が一生懸命働く姿を見ると「自分たちも負けていられない」と周囲の大人たちの気持ちも引き締まります。すでに仕事に慣れた社員でも、フレッシュな存在を目にすることで初心に返ることができ、若い人の熱心な姿勢から刺激を受けて新しい気づきを得るんです。そうした相乗効果が、職場全体にいい影響を与えていると思います。
実際の例を挙げると、私がマネジメントしているメンバーのひとりに18歳で入社して今年で7年目になる社員がいます。今ではガントリークレーンの免許を取得し、現場の中心で活躍しています。その社員は人柄がよく、やる気があって、いつもハキハキとした態度で臨んでいました。そうした姿勢が周囲のサポートを引き出し、結果的に大きな成長につながったのだと思います。
高野:飯塚高校サッカー部でも高卒で就職する人がいます。正直、自分だったら職場で年上の人たちに遠慮してしまうんじゃないかと思っていました。でも若くても成長できる環境があると知って、とても魅力的に感じました。
冨澤:僕は将来サッカーを辞めたあと建築の仕事をしたいと思っていて、大学で建築を学びたいと考えています。周りを見ても大卒で就職する人が多い印象でしたが、高卒で入って活躍している人がいると聞いて、自分にとっても新しい道の選択肢があるんだと気づけました。

吉田:僕は大学進学を希望していますが、古玉さんのお話の中で出てきた「ハキハキ話す」「元気に挨拶をする」といった人柄の部分がすごく印象に残りました。高卒採用に限らず、こうした姿勢は社会で大切にされるものなんだと感じます。
将来自分も大学を経て就職活動をすることになりますが、基本的なことを当たり前にできるかどうかが人生において大事なんだと、今日のお話から改めて学ぶことができました。
「相手のことを考える」が長く続く組織の共通項

高野:博多港運さんは80年以上の長い歴史を持つ会社だと伺いました。僕たち飯塚高校サッカー部も、中辻監督の体制になって11年が経ち、短期間で強くなってきましたが、これからもっと長く続いていくチームにしていきたいと思っています。
そこで質問なのですが、博多港運さんがそんなに長く続いているのはどうしてなんでしょうか? 会社として、あるいは社員一人ひとりがどんな気持ちやスタンスで働いているからこそ、それが実現しているのか、ヒントをいただけたらうれしいです。
古玉さん:中国や韓国との輸出入では、日々タイムリーな対応が求められます。東京や大阪といった首都圏のお客様からも頼られることが多く、その際に迅速に動くだけでなく、「こちらのほうがいいですよ」とよりよい選択肢を提案してきたことが、会社の信用を積み上げ、信頼につながっていると思います。
会社としての柔軟性も大きな特徴です。難しい依頼でも「どうしたらできるか」を考え、なんとか方法を見つけようとする姿勢が根付いています。「困っているお客様を支援したい」という精神が社員一人ひとりに浸透しているんです。
さらに、私たちのお客様の先には商品を待っている多くの人がいます。特に食品や飲料のように生活に直結するものは、すぐに届かなければ困る人がいる。そうした思いを共有しているからこそ、社会インフラを支える会社として長く続いてこられたのだと思います。
吉田:「どうすればお客様を支援できるか」という姿勢は、自分が大事にしている考え方と重なります。僕はキャプテンとして「利他主義」を意識していて、チームや仲間が全国ベスト4以上という目標を達成するために、自分はどう動けば貢献できるのかを常に考えています。古玉さんのお話を聞いて、自分の考えと重なる部分があり、とても共感しました。
高野:僕も普段から「相手のことを考えて行動する」と意識しています。できないことがあっても、自分にできることをやろうと心がけています。今日のお話を聞いて、それは人間関係だけでなく、会社が長く続くためにも欠かせないことなんだと分かり、とても勉強になりました。
冨澤:古玉さんが「お客様一人ひとりを大切にする」とおっしゃったのを聞いて、僕たちも地域の方々に支えられて活動できていることを改めて感じました。本当は地域の一人ひとりにどう貢献できるかを考えて行動しないといけないと思うんですが、まだ自分にはそこまでの視点がありません。今日のお話をきっかけに、もっと考えていきたいと思いました。
選手全員:今日は貴重なお話をありがとうございました!
古玉さん:こちらこそ、ありがとうございました。港湾の仕事は、国民の生活を支える大切な仕事です。港があるからこそ、私たちの生活水準が成り立っている部分が多くあります。ぜひこの仕事に興味を持って、将来の選択肢のひとつとして考えていただけたらうれしいです。
今回の対話を通じて、高校生たちは港湾物流という社会インフラの現場を知り、古玉さんは若い世代の真剣なまなざしから新たな気づきを得ました。立場は違っても、「相手のために力を尽くす」という姿勢が組織を強くし、未来を切り開いていくことを確かめられた時間でした。
港とサッカー部。一見まったく異なるフィールドであっても、根底にあるのは「人と人とのつながり」です。この座談会で交わされた言葉が、互いのこれからにとって小さな道しるべとなれば幸いです。
企画・構成/池田園子