飯塚高校サッカー部/FOOTBALL CLUB IIZUKA

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特別座談会:「日本と世界をつなぐ港湾物流と“いいチーム”の条件」吉田善×高野真音×冨澤琉胤×博多港運 古玉尚大

飯塚高校サッカー部では、多くのスポンサー様からご支援をいただいており、選手とスポンサー様との交流を深めることを目的に、両者による対談や座談会を順次実施しています。

今回はスポンサーの1社である「博多港運株式会社」から港運部で主任を務める古玉尚大さんをお招きしました。古玉さんは大学卒業後、全く異なる業界からの転職で博多港運に入社し、現在8年目を迎えています。

友人の紹介で港湾業界に興味を持ったことがきっかけだったといいます。現在は現場スタッフへの指示や安全管理を担う立場として、港湾物流の現場を支えています。

左から吉田、高野、冨澤

サッカー部を代表して登場したのは、キャプテンの吉田善(3年)、高野真音(2年)、冨澤琉胤(2年)の3人です。

港湾物流の仕事の実際ややりがい、そしてサッカー部の組織運営との共通点について語り合いました。

私たちの生活を支える港湾物流の現場

キャプテンの吉田

吉田:今日は座談会の機会をありがとうございます。まず、博多港運さんという会社やそこでできる仕事について伺いたいです。特に「港での仕事」が具体的にどんなものかを知りたいです。

港と聞くと、大きな船や重機で作業しているイメージがありますが、詳しいことはあまり分かりません。専門的な言葉ではなく、僕たち高校生にも分かるように教えていただけるとうれしいです。

古玉さん:博多港運は1942年に設立され、80年以上の歴史を持つ博多の老舗総合物流会社です。港の仕事は実に幅広いのですが、簡単に言えば「日本と海外をつなぐ役割」を担っています。

日本の輸出入のうち、実に99.7%が船によって行われています。つまり港は、日本の暮らしや経済を支える重要なインフラなんです。もっと身近な言葉で言うと、皆さんの衣食住――服や食べ物、暮らしに直結しているのが港の仕事です。

高野:国内で買い物をすることが大半ですが、海外から商品を注文したこともあります。そういうときに港を経由しているんだなと、改めてつながりを実感しました。

冨澤:僕も港の仕事が身近に感じられるようになりました。スーパーでも海外産のお肉などをよく見かけますが、それらが港を通って届いているんだなと分かりました。

古玉さん:イメージが少し具体的になりましたか? たとえば、皆さんが着ている服も「メイド・イン・ジャパン」は少なく、多くは中国やベトナムなど東南アジアから輸入されたものです。それが博多港を経由して全国のお店に並んでいるんです。

さらに、博多港の大きな特徴は「アジアに近いこと」です。博多から大阪や東京に行くのと同じくらいの距離に韓国や中国があるため、アジアからの貨物が多く集まります。地理的な強みを生かして、博多港はアジアとの物流拠点になっているんです。

巨大クレーンが支える港の仕事

高野:吉田くんも言っていましたが、僕も港での作業というのは、特殊な重機や大きな車両を使うイメージがあります。実際にはどんなものを使っているのか教えていただけますか?

博多港運の古玉さん

古玉さん:港では、荷物の入ったコンテナを巨大なコンテナ船から降ろす作業をしています。そのときに使うのが「ガントリークレーン」という大きなクレーンです(※)。海外から届いた荷物は、まずこのクレーンで港に降ろし、通関という手続きを経て「日本に入れていい」という許可を得てから、ようやく国内に流通します。

冨澤:ガントリークレーンは誰でも扱えるわけではないですよね?

古玉さん:その通りで、このクレーンを操作するには国家資格が必要です。まず座学で勉強して試験に合格し、その後に実技講習を受けて初めて資格が取得できます。資格を持つ人だけが操縦できる、専門性の高い仕事なんです。

※ガントリークレーン 港の岸壁に立つガントリークレーンは全長127メートル、運転席は地上約50メートルの高さにある。床はガラス張りで、下のコンテナを確認しながら操作。巨大なUFOキャッチャーのように、船に積まれたコンテナをつかんで下ろし、トラクターヘッドの荷台に積み込む。逆に荷台から受け取って船に積み込む作業も行う。

コンテナ船の停泊時間は平均8~10時間と短く、その間に積み下ろしを終える必要がある。ベテランになると、最大40トンのコンテナを1時間に40本以上、1シフト(8時間半)で約300本扱うのが一般的だとか。1本あたりの作業時間はわずか1分30秒から2分ほど。

迅速かつ正確な作業が求められる一方で、最も重視されるのは安全。周囲では多くの人が働いているため、作業前のミーティング(後述)で危険ポイントを共有し、無線や手・笛の合図で連携して作業を進めている。

吉田:国家資格となるとかなり専門的だと思うんですが、実際に資格を取るのはどんな人なんでしょうか? それから、会社は資格取得を目指す社員をどうサポートしているのかも気になります。

古玉さん:会社としては、社員一人ひとりの成長を見ながら「挑戦してみない?」と声をかけることがあります。スキルアップやキャリアアップにつなげてほしいという思いがあるからです。また、資格取得にかかる費用はすべて会社が負担します。社員が安心して挑戦できるよう、全面的にサポートしているので、やる気があれば誰でもステップアップできる環境になっています。

高野:そうすると、資格を持っている人材が限られていて「人手が足りないな」と感じることもあるんでしょうか?

古玉さん:そうですね。港の仕事はまだ若い世代にあまり知られていないのが課題です。今は年配の方が多いので、どうやって若い世代にこの仕事の魅力を伝え、関心を持ってもらうかに力を入れているところです。

古玉さんの仕事と1日のスケジュール

冨澤

冨澤:古玉さんの1日のスケジュールを教えてください。実際にどんな流れで仕事をされているのか気になります。

古玉さん:日によって多少の違いはありますが、基本的な流れを紹介します。朝7時半ごろに出社し、8時前には現場に入ります。8時からはスタッフ全員で「TBM(ツールボックスミーティング)」を5〜10分ほど行います。これは毎日の作業前に、その日の作業内容や潜在的な危険を全員で共有するための短い打ち合わせです。内容を確認したうえで、8時半ごろから作業を開始します。

昼は12時から1時間休憩を取り、13時から午後の作業を再開します。16時ごろに作業が一段落したら、振り返りのミーティングを行い、その後事務所に戻ります。退社は16時半から17時ごろというのがおおまかな1日の流れです。

高野:物流の仕事って、一人ひとりが決められた作業を黙々と進めるイメージを持っていました。だから、作業前に全員でミーティングをして内容や注意点を共有していると聞いて、とても勉強になりました。

冨澤:ミーティングについて質問です。僕たち飯塚高校サッカー部でも練習の前後に短いミーティングをしています。会社で行うミーティングには、どんなメリットがあるのでしょうか?

古玉さん:特に仕事後の振り返りミーティングは重要です。その日の作業で「ここはよかった」「ここは危なかった」といった点を全員で共有することで、次の仕事に生かすことができます。全員が同じ認識を持つことが安全にも直結しますから、ミーティングは周知と教育の場として大切な役割を果たしています。

風通しのよさがよいチームをつくる

吉田:博多港運さんには多くの部門があり、部門や部署を超えて関わることも多いと思います。僕たち飯塚高校サッカー部も、今年から部門制を取り入れて6つの部門で運営しています。

飯塚高校サッカー部 2025シーズン新体制についてお知らせ

僕がキャプテンに任命されたとき、監督と「どういうチームをつくろうか」と話し合ったのですが、そのときに意識したことがふたつあります。ひとつは、部員全員に「自分は飯塚高校サッカー部に所属している」という帰属意識を持ってもらうこと。もうひとつは、一人ひとりが自分の力を100%、120%出し切れる環境をつくることです。全国でも知られるチームになってきたからこそ、責任感を持った在り方であってほしいと思いました。

そのために部門を設け、それぞれに役割を与えました。部員が自分の力を最大限に発揮できるようにすることが狙いです。こうしたチームづくりの工夫に関連して、古玉さんが職場で心掛けていることを伺いたいです。僕たちの活動にもヒントになると思います。

古玉さん:私自身も学生時代にスポーツをしていて、9歳から大学卒業までハンドボールを続けました。中学・高校・大学すべてでキャプテンを務めた経験があります。大学では二軍で過ごすこともありましたが、チームをまとめて士気を上げるにはやはりコミュニケーションが大切だと強く感じました。

吉田さんの考えにも近いのですが、「力を出し切れていない選手の力をどう引き出すか」というのは常に考えていました。そのために仲間と積極的に話し合い、良かった点や改善点を監督に伝えることもしていました。

そうした経験は、今の博多港運での仕事にも生きています。部署を超えて多くの人と関わるなかで、何気ない会話や明るい挨拶をするだけでも雰囲気は大きく変わります。よいチームワークを生むには、やはり日々のコミュニケーションが欠かせないと思います。

吉田:僕が部門制度をつくった理由のひとつに「仲間が120%力を出せる環境をつくりたい」という思いがありました。ただ、それがどうして120%につながるのかと聞かれると、自分のなかでも少し曖昧なところがあったんです。

でも古玉さんのお話を聞いて、やっぱりコミュニケーションが大事なんだと腑に落ちました。1年生からすると3年生は怖い存在に思えるかもしれませんが、部門を通じて会話が生まれれば、その壁も低くなる。たとえば1年生が急に上級生と一緒に活動する場面でも、安心して動きやすい環境になると思います。

冨澤:古玉さんのお話を聞いて、学生時代から大事にしてきた挨拶やコミュニケーションが、社会人になってからも役立っていることが分かりました。スポーツをしていると「挨拶しなさい」とよく言われますけど、そういう基礎的なことこそが大切なんですね。

高野

高野:僕はスポンサー担当部門に所属していて、ホームゲームのときにコーヒーやスポンサーの方が提供してくださった野菜を販売しています。学年を超えて一緒に活動するので、コミュニケーションは欠かせません。

古玉さんのお話を聞いて、どんな場面でもコミュニケーションが大事だと改めて思いました。試合の日には地域の方々も来られるので、スポンサーさんの商品を広める活動にもつながっています。そこでもやっぱり会話ややりとりがとても大事だと感じています。

(後編)特別座談会:「利他の精神がつなぐ、80年続く会社と未来へ続くチーム」吉田善×高野真音×冨澤琉胤×博多港運 古玉尚大に続きます

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企画・構成/池田園子

 

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